ヨーロッパ原産でムラサキ科の帰化植物ヒレハリソウ(コンフリー)をご存じでしょうか?明治時代に日本に入ってきて、家畜だけではなく人間も天ぷらなどで食用としていた過去の野菜です。そのコンフリーに近年アサギマダラが訪れており、今年もオスの個体を6月1日に確認しました。
(ヒレハリソウ(コンフリー)の周辺を舞う翅がボロボロのアサギマダラ♂:長野県朝日村 2022.6.1)
ボロボロになった翅の様子からして、きっと暖かい地方から、幾つもの山を越えて長野県にやってきた個体だろうと思われます。これがコンフリーの周辺に訪れた個体です。
コンフリーは、恐らく日本各地にどこにでもあるだろうと思いますが、長野県中央部の西側に位置する朝日村でも、どこということもなく点在しています。5月下旬から6月にかけて、薄紫の花を咲かせ、道端や耕作放棄地、家の庭のようなところでよく見かけます。
食べられると聞いていたので、過去に天ぷらにして食べたことがあります。ウドなどの山菜には独特の風味があるのですが、コンフリーにはクセがなく、美味しいわけでもまずい訳でもありませんでした。
でも、そのコンフリーはアルカロイドを含むということで近年は口にすることもないのですが、多年草なので抜かない限りその場所で毎年花を咲かせているのです。
実はそのコンフリーにアサギマダラが来ることを知ったのは2016年のことです。朝日村の実家の庭のコンフリーで、アサギマダラのメスが吸蜜していたからです。
(コンフリー(ヒレハリソウ)で吸蜜するアサギマダラ♀:長野県朝日村2016.6.1)
アサギML(メーリングリスト)で情報を流しましたところ、広島の本田計一先生から「そちらにまだ沢山生えているのなら、オスが集まるかどうかなど(刈り取って乾燥させた方がベター?)調べてみられると面白いと思います」と、お返事いただくことができました。
本田先生にお聞きしましたように、自宅の柿の木の下に、刈り取ったコンフリーの葉っぱを束にして吊るしておきました。コンフリー自体の葉っぱの匂いは、生よりは乾燥の方が強くなっているのを感じることができました。でも、吊るした時期が悪かったのか、山際の家ではないためなのか、アサギマダラは来ませんでした。
その後、北アルプス山麓周辺でコンフリー調べを行いました。行った先々で出会ったら写真撮影して記録した程度ですが、小谷村、大町市、生坂村、松川村、松本市、朝日村など、どこということなく点在するのですが、まとまってある訳でもなく、その周辺をアサギマダラが乱舞する訳でもありませんでした。
実家から持ってきた自宅のコンフリーは数年間そのままにしていましたが、アサギマダラが来ないために5、6株あった株を1株だけ残して昨年抜いてしまいました。
一方、実家の朝日村へは、時々庭や畑などの管理のために出向いており、葉っぱを乾燥させて吊るすまでもなく、コンフリーの枯れ葉は地面にそのままにして、放置していました。近所の家などにもコンフリーがあり、それもそのままの状態でした。
そうした状況の中、昨年5月25日、朝日村の実家の庭でコンフリーの周辺を舞うアサギマダラのオスを観察できました。花が咲き出してからのことです。
(コンフリー(ヒレハリソウ)の周りを飛翔するアサギマダラ♂初見:長野県朝日村2021.5.25)
吸蜜する訳でもないのですが、花の周辺や根元付近を何かを探しているかのようにぐるぐると回りながら舞っているのです。
(コンフリー(ヒレハリソウ)の周りを飛翔するアサギマダラ♂初見:長野県朝日村2021.5.25)
枯れ葉を根元にそのままにしていたので、その乾燥した匂いに引き寄せられたのかも知れません。
今年も草取りなどで朝日村通いを続けていますが、5月には期待していたアサギマダラを確認できないでいました。
しかし6月1日の昨日、庭に乗り入れた車に驚いたようにアサギマダラが一頭、舞い上がりました。その後どことはなしに姿を消してしまいました。また来るかも知れないと期待していた頃に、コンフリーの周辺を翅を忙しく動かして舞うアサギマダラを見つけ、撮影することができました。
(ヒレハリソウ(コンフリー)の根元付近を舞う翅がボロボのアサギマダラ♂2022.6.1)
昨年に引き続き、オスが2回来てくれました!
今年も、枯れて腐りかけたような葉っぱは根元周辺にそのままにしています。その匂いに惹きつけられたのでしょうか?
オオブタクサの新芽も伸び出している、そんな庭にも来てくれたことは嬉しいことです。ネットは車に入れていますが、カメラでの撮影が精一杯で、マークがないことを確認できただけです。
翅の下側がたくさん欠けて、ボロボロになっていました。きっと苦労しながらの北上の途中で立ち寄ってくれたのでしょうね。昨年より7日間遅い、6月に入ってからの確認でした。
長野県ではすでに軽井沢町、宮田村、小谷村、大町市、伊那市、大鹿村などから初見情報が寄せられています。さらに北海道奥尻島からの初見・標識情報も5月中に寄せられています。
引き続き国内各地で観察されたり、マーキングされたりするでしょうね。今後の皆さんからの情報を楽しみにしております。
このオスのアサギマダラにちょっと期待します。素敵なメスと出会えますように。