イケマを好むジュウジナガカメムシ:長野県

先日、アサギマダラの会のまとめ会で講演会があり、講師の先生がキジョランやイケマなどを好む虫の名前をいくつか出されたんですね。

アサギマダラの幼虫が好む植物の中で長野県で見るのはイケマが多いですが、実はそのイケマを好むのはアサギマダラの幼虫だけではなく、ジュウジナガカメムシもイケマが大好物だということを知りました。

長野県松本市美ヶ原林道 標高:1,300m付近 2022年6月8日撮影

ヒメジュウジナガカメムシやジュウジナガカメムシに新芽が加害されると、その植物が枯死することもあるとのことでした。それで、まとめ会の後、メモを見ながら、気になって過去のデータを探してみました。

現地のイケマを撮影した画像を確認したところ、講師の先生が見せてくださった、赤いカメムシに似たカメムシがいくつか出てきました。

その画像のカメムシが該当のカメムシなのかはまったく分からなかったのですが、アサギMLにアップしてお聞きしてみました。

上の画像がそれです。早速何人もの皆さんが反応し、先生方が画像を確認してくださり、ジュウジナガカメムシだとのことでした。

イケマでアサギマダラの卵を確認していた時、たまたまイケマの葉っぱにカメムシがいたので撮影しただけだったのですが、このカメムシもイケマが大好物だったと知ることになりました。

よく似たカメムシでヒメジュウジナガカメムシは、どうやら長野県よりも暖かいところにいるようです。暖かい地方の皆さんは、ガガイモやキジョランなどで確認できるかも知れませんね。

赤い色とシャレた模様がとってもきれいですが、このカメムシたちが集団でアサギマダラの食草を吸汁し尽くしてしまえば、アサギマダラが産卵する食草はあっという間になくなってしまいそうです。

上の個体は6月8日の撮影で、交尾でした。9月3日にはイケマにいた集団の個体を撮影しており、それは幼虫だったようです。

皆さんのところでも、アサギマダラの食草に、このようなカメムシやアブラムシなどがいるでしょうか?

もしいましたら、画像とともに、撮影年月日、場所(座標もわかれば)、撮影者の実名を添えて、このブロクか、Facebookアサギマダラ・マーカーの広場にぜひ情報を提供してください。

上の個体の簡単な確認情報です。このような感じで構いません。

イケマを食べるカメムシ情報】
確認地:長野県松本市美ヶ原林道
座標:36.25089, 138.03311付近
標高:1,300m付近
確認日:2022年6月8日
撮影者:田原富美子

MLで情報を共有させていただき、専門家の先生方にお聞きしてみますね。

カメムシだけがアサギマダラが増えたり減ったりする大きな要因とはならないかも知れませんが、何らかの手がかりの一つになったらいいですね。よろしくお願いいたします。

本の紹介「モンシロチョウは史前帰化昆虫か? アサギマダラの生活 :長谷川順一著」

冬になると、フィールドに出かける機会がめっきりと減ってしまいますね。そんな時期ですので、アサギマダラに関係した本を紹介します。

タイトルは「モンシロチョウは史前帰化昆虫か? アサギマダラの生活 」。蝶やアサギマダラの研究者の一人、栃木県の長谷川順一さんの著作で、内容は、モンシロチョウとアサギマダラの二本立てとなっています。この時期に読んでみられませんか?

子供の頃から自然の中で遊び、昆虫や花に親しみ、大学では植物を専攻したものの、後に生物全般に関心が広がった長谷川さんが、モンシロチョウは1975年から、アサギマダラは2004年から調査、研究をしています。

モンシロチョウは誰でも知っていてどこにでもいる普通のチョウですね。キャベツの害虫と思っている方が多いと思うのですが、何を食べているのか、実際に何が大好物なのでしょうか?ではその植物はどこにあるのでしょうか?

モンシロチョウが特に好む植物は日本の土着植物か帰化植物かという観点から、食草、移動等を検討しています。

モンシロチョウの蛹や抜け殻さえ見たことがない私は、カラー写真からその多様性に驚かされました。

さて「アサギマダラの生活」は、皆さんにとって一番の関心事ではないでしょうか?

長谷川さんの住む北関東での夏のマーキングと、その成果はグラフや地図などで見ることができます。8月にマーキングした個体が9月、10月、11月と、どのように移動していったのでしょうか?

どのくらいマーキングしてどれほどの再捕獲があったのでしょうか?気になる再捕獲率はどのくらいなのでしょうか?

アサギマダラと言えば、渡りの観点から再捕獲に目を留める皆さんが多いと思いますが、アサギマダラの産卵時期とか、羽化の時期ってどうなっているのか気になりませんか?

長谷川さんご自身が現地に何度も出向いて調査されています。では調査方法はどのようなものなのでしょうか?

記述を通して、私は「長谷川さん、根性がある〜!」と思いました。私個人は、同じことを野外でやっても、たくさんのデータを取るほどには至っていません。信州人がよく口にする「ずくがない」からです。長谷川さんを含め、研究者たちはそのずくの塊です。そして関心も持ったら、それを継続する。その根性の持ち主だからこそ、たくさんのデータが取れて、思わぬ発見もあるんですね。

キジョランがない(と思われる)長野県では秋はもっぱらマーキングですが、栃木県には常緑のキジョランがあり、秋にも産卵を確認できるようです。越冬も確認できているようですので、関東方面の皆さんはこの時期ですら観察する機会がありそうですね。

気象や天敵にも影響を受けるアサギマダラですが、カラー写真からもたくさんのことが学べます。

「今は本が安くできる。パソコンで編集し、表紙まで編集した」と言う長谷川さんです。発行も長谷川さんご自身です。

縦256、横183mm、110ページ、税込み1320円。六本脚、南陽堂書店などで扱っています。

2022年度のまとめ&2023年度計画立案会(通称「まとめ会」)プログラム

アサギマダラの会の「まとめ会」のプログラムなどを紹介します。

日時: 2023 年 2 月 18 日(土) 13:00~17:10
様式: ZoomMeeting によるオンライン開催
参加者: 本会会員および会員外でアサギマダラに関心のある者
(ともに事前の参加申し込みメールが必要)

内容:
13:00 開会・諸連絡・ Zoom 使用上の案内など

13:05 会長挨拶

13:10 【ミニ・シンポジウム】80 分
 『アサギマダラ個体数の変動要因は何か』–なぜ 2022 年は少なかったのか–
 【基調講演】本田計一氏(西条生態学研究所・広島大学名誉教授)
 ディスカッション

14:30 【研究発表①】渡辺康之氏 25 分
 『2022 年、兵庫県宝塚市・尼崎市武庫川沿岸地域におけるアサギマダラのマーキング調査について』

14:55 休憩 15 分

15:10 【研究発表②】山上初音氏(大阪大学大学院理学研究科生物科学専攻)25 分
 『アサギマダラの定位方角を調べる実験系の構築』

15:35 【研究発表③】金澤至氏・﨑山孝也氏 25 分
 『和歌山県のアサギマダラなどの新知見』

16:00 【研究発表④】増澤敏弘氏 25 分
 『のっぺ山荘でのマーキング調査から』

16:25 【研究発表⑤】藤野適宏氏 15 分
 『ジョロウグモはなぜアサギマダラを食べないのか』

16:40 総会(30 分)

17:10 閉会