マークを付ける準備 ー初心者のためのマーキング講座(3)

3回目の今回からは、いよいよマーキングの方法についての解説です。マーキング調査は、標識再捕(獲)法とも呼ばれていて、本来は全個体数推定のための調査方法です。移動性の強いアサギマダラでは、個体数を推定しにくいこともあって、むしろ移動を証明したり、移動の様子を理解するために行われています。

具体的な解説の前にまず注意事項を説明します。

昆虫であるアサギマダラは、鳥獣保護管理法という法律で守られている野鳥などと異なり、誰でも捕獲してマーキングを行うことができます。しかし、マーキングを行ったら、記録してきちんと報告しましょう。捕獲が禁止されている特別保護地区や私有地などでのマーキング、その行為が禁止されている自宅研修期間中のものなど、実名で報告できないマーキングは止めてください。現実に過去にそれらの行為がありました。そのマーク個体を発見して喜ぶ子供たちなどが、後のち標識者がわからずにがっかりしますし、全てのデータの信頼性が極端に低下していきます。報告の方法は最後に説明します。

その他の注意点としては、捕虫網に多数のアサギマダラを入れて、日なたに長時間放置しないことです。捕虫網の中でバタバタとはばたき、ハネが破損しますし、強い日射しに長く当たることで、あっという間に全部死んでしまいます。1頭捕獲してマークを付けて放蝶後に、次の捕獲をするのがベストです。アサギマダラは別な個体がいると、安心して飛来します。フジバカマ類に訪花している数頭のアサギマダラを全て捕獲してしまうと、他から飛来しなくなります。

また、アサギマダラを捕獲すると、背中あたりに黄色の水滴を出すことがあります。そして少し匂いがします。アサギマダラなどのマダラチョウ類は、体内に特殊な毒成分を含み、鳥などの捕食者から身を守っています。蝶・蛾類は多数の種からなるグループですが、その中で見た目がはでな蝶の仲間は、どれも多少の毒を含むと考えられます。蝶の中でもアサギマダラは、特に毒成分をうまく利用して身を守っており、そのせいか優雅に飛翔します。アサギマダラの体全体に毒成分があるので、素手でさわった指で自分の目をこすることは止めてください。マーキング作業を終えたら、必ず手洗いをお願いします。

必要なものは、捕虫網(愛好者は釣り用玉網とナイロンネットを使うが、初心者はスーパーなどで入手できるものでよい)、油性フェルトペン(黒色細書で、コンビニなどで入手できる)、記録用紙(マーキング解説付きの汎用記録用紙PDFが末尾のURLからダウンロードできる)、記録用ペン(黒色ボールペンJETSTREAMがおすすめ)、そしてスマホです。他に私は定規(前翅長を測定するなら。10センチで透明なものが使いやすい)、気温計(湿度も測定できるもの)、高度計(腕時計内蔵)、白色タオル(片方を結んでおく)を持参しますが、なくてもかまわないでしょう。夏休みの自由研究のテーマとしてマーキングをするのであれば、なんとか準備してください。

次回は具体的な作業を解説する予定です。

マーキング解説付きの汎用記録用紙PDF

マークを付けよう! -初心者のためのマーキング講座(4)