マークのついたアサギマダラを見つけたら -初心者のためのマーキング講座(2)

初心者のためのマーキング講座の2回目は、アサギマダラのハネにマークがあったらどうするか、という解説です。

アサギマダラ自体は、10月の西日本の平地でよく見られますので、稀少種という扱いではありません。私たち愛好者は、どこでアサギマダラが見られたか、に関心がありますが、その目撃記録を全て収集しているわけではありません。しかし、ハネにマークがついたアサギマダラについては、情報を集めています。

マークのついたアサギマダラを見つけたら、ぜひ捕獲して写真を撮影してください。捕獲は捕虫網がないと困難と思います。発見してすぐに捕獲しないと、たいていは南西方向への移動の途中に腹ごしらえしているところなので、飛び去ってしまう可能性があります。撮影は専用の接写拡大用のマクロレンズ付きカメラでなくても、最近のスマホのカメラは高性能なので、うまく撮影できるでしょう。左右のハネにマークが書いてあることも多いので、左手でつぶさないように胸を押さえて、両側を撮影してください。きれいに撮影できたら、放してあげてもいいです。

しばらく保管するためには、三角紙に入れると、おとなしくなります。三角紙がなければ、チラシなどの四角の紙を斜めに折って余分なところをさらに折ると、三角紙になります。その中に入れてあげます。虫かごに入れると、バタバタしてハネが痛んで、かわいそうな姿になります。弱いハネの先端をつかまずに胸をつかむようにしましょう。やさしく扱ってください。

餌をあたえる方法は、皿の上にティッシュを丸めて、黒砂糖、ハチミツ、スポーツ飲料などの水溶液をうすめて浸します。そこに脚をつけてやります。うまく口吻を伸ばして吸わなければ、楊枝などで口吻を伸ばして、ティッシュにくっつけてやります。それでしばらく吸汁すると思います。十分吸うと、室内を飛んで、明るい窓の方に飛んでいきます。

このブログのトップページにもある上の写真のアサギマダラに付けられたマークは、「OSA 10/13 IKA 229」です。大阪(OSA)で10月13日に金澤至(イニシャル3文字IKA)がその年の229番目にマークした個体という意味です。このように、地名記号、日付、個人記号、個体番号の4要素をハネに書くことになっています。この頃は10月13日を「10/13」と書いていましたが、最近では「10.13」と書いています。「/」が「1」に間違われやすいからです。

以上をふまえて、写真撮影されたマークを読んでください。うまく読めれば、その記号と性別、捕獲した地点、捕獲者、日付を教えていただければ、とてもありがたいです。連絡先は、各地の自然系博物館の昆虫担当か、大阪市立自然史博物館(TEL06-6697-6221)、あるいはアサギマダラの会です。うまく判読できない場合には、このサイトに書いてあるメールアドレスに写真を添付して送っていただいてもいいです。よろしくお願いいたします。

ただし、同所再捕獲というものも多いのです。フジバカマ類がたくさんあるところで、マーキング愛好者がマークをつけたアサギマダラが、その同じ場所で別な方に撮影されることがあります。当日撮影されたり、数日後に撮影されることもあります。同じ場所に数日間滞在したという事実を示す同所再捕獲で、価値のある再捕獲なのです。しかし、この同所再捕獲が多すぎて、どうしても別な場所で再捕獲される異所再捕獲に比べると軽い扱いになってしまいます。異所再捕獲だけでも毎年1000例以上が記録されますので、現実には同所再捕獲は再捕獲として扱うことができない状態になっています。

旅をするチョウ アサギマダラに会いに行こう! ーポイント案内1ー

アサギマダラを見つけたら -初心者のためのマーキング講座(1)

アサギマダラは、北米のオオカバマダラのように、1000キロ以上も旅をする謎の蝶です。その生活は40年以上にわたるマーキング調査によって、少しずつ明らかになってきました。その謎の蝶がこの日本に生息することに、私たち愛好者は感謝しながら調査を実施しています。アサギマダラは国境を越えて人と人を結びつける稀有な蝶です。あなたもこの調査に参加してみませんか。

アサギマダラの会の昨年の総会で、アサギマダラのマーキング初心者向けの解説がほしい、という意見がありました。そこで、「初心者のためのマーキング講座」シリーズとして連載を開始したいと思います。今月中に連載を終了し、今後アップデートしていく予定です。その最初の回であるこの小文は、アサギマダラを見つけたらどうしたらよいか、という解説です。

このブログのトップページにも使っているこの写真は、コバノフジバカマ(絶滅が心配されている秋の七草のフジバカマではありません)に訪花しているアサギマダラのオスですが、マークがつけられています。大阪市内で10月に撮影された写真です。

西日本の平地では、9月末から10月末までの約1か月間にフジバカマ類に訪花するアサギマダラがよく見られます。植物園や、神社、庭に植栽されたフジバカマ類や、山地に自生するヒヨドリバナの花蜜には特殊なピロリジジン・アルカロイド(PA)が含まれ、アサギマダラのオスが主に誘引されます。

下の写真のように、メスは後バネの末端近くの黒い性斑がなく、フジバカマ類にはあまり誘引されません。林内にいて、食草に産卵しながら、コシアブラなどの別な花で吸蜜します。この写真は、日本でこのアサギマダラに標識された西川尚実さんによると、中国のカメラマンで侯鈞毛さん(”毛”の部分が日本のフォントにはなく表示できません。正確には毛でも手でもなく、”毛”のしの部分がまっすぐの漢字らしいです)が台湾の蘭嶼島で撮影されたもので、長野県から移動してシロノセンダングサ類に訪花したメスです。長距離を移動したアサギマダラですから、全体に色あせており、ハネのあちこちが破損しています。苦難の長旅の過酷さがしのばれます。

アサギマダラを見つけたら、よく観察してください。ハネに文字が書いてあれば、それがマークで、その文字を判読すると、どこから飛来したかがわかります。最近では1年間に約10万頭のアサギマダラにマークが付けられています。皆さんが見つけるアサギマダラにもマークが付いている可能性は高いのです。

知ってる? アサギマダラ! ー旅をするチョウー

マークのついたアサギマダラを見つけたら -初心者のためのマーキング講座(2)

アサギマダラ年鑑のユーザ登録

アサギマダラ年鑑は、アサギマダラのマーキングデータ(標識記録と再捕獲記録の両方)を書き込むことができるサイトです。以前は日本鱗翅学会アサギマダラプロジェクトにより運営されていましたが、現在はアサギマダラの会により運営されています。データの書き込み方法などを簡単に説明します。

アサギマダラ年鑑のサイトは、ウィキペディアと同様なwikiというシステムです。登録されているユーザ名でログインすると、左上に「編集」が現れ、クリックすると編集画面になります。ログインしなくてもデータを閲覧できます。

マーキングデータは、そのデータを最も知っている標識者や再捕獲者が書き込むのがベストと思います。それが無理であれば、報告者が書き込むことになります。それで、なるべく多くのマーキング愛好者に登録していただきたいと考えていました。しかし、ユーザ登録希望者の中には、アサギマダラに無関係と思われる方もいました。その確認に手間取りました。最近では、「アサギマダラなどの移動昆虫のメーリングリスト(ML)asagi」の参加者に書き込んでもらうことにしています。アサギマダラのマーキング調査に関心がある方は、このMLに参加されているはずだと思われるからです。

アサギマダラ年鑑にユーザ登録をして書き込みたい方は、まず「アサギマダラなどの移動昆虫のメーリングリストasagi」に登録をお願いいたします。そして、いろいろな情報に接して、データの重要性に気づかれてから、書き込みを行ってください。特に修正と消去に注意してください。これ以上の情報は、MLで流します。お急ぎの方は、p.niphonica@gmail.comまでご連絡ください。

MLへの登録方法は、アサギマダラ・マーカーの広場の左中央をご覧ください。