10月11日にアサギマダラの♀が3回ほど占有らしい飛翔をしていたので報告します。
アサギマダラの♂が占有飛翔を行うことはよく知られています。それに対して、今回観察したのは、♀の占有飛翔らしきものなのです。和歌山県日高川町猪谷という場所で、林道です(右写真)。ここは林業関係者の方から教えていただいた地点で、急な崖にヨシノアザミとヒヨドリバナがそこそこ咲いています。以前に1日で10頭くらい標識をつけたことがあり、この日もそのくらいは標識できるだろうと8時半頃には到着しました。天候は晴れ時々くもりで、気温15℃で湿度57%でした。すでに1頭が飛んでいました。慌てて車を降りて、ネットを出している内に飛び去ってしまいました。それからしばらくは1頭も現れませんでした。
9:20頃にようやく♀が飛来して、ヨシノアザミに来たところを捕獲し、「IKA 003 HDG 10.11」と標識しました。前翅長61mmと大きく、新鮮で破損なしの未交尾個体でした。ヨシノアザミの花に付けて放蝶すると、すぐに姿を消しました。
9:40頃にまた姿を現し、ヨシノアザミで吸蜜していました。あちこちの花で吸蜜した後に、9:44に上空の10mくらいの高度で2~3回ゆっくりと円形飛翔を行いました。短時間枝先で休憩した後に9:47にまた占有らしい飛翔を行いました。この時点でこれは♀の占有飛翔かもしれないと考え、写真・動画撮影を試みることにしました。10:12にも占有らしい行動が見られましたが、ずっと撮影モードにしているわけにいかず、撮影モードにするのに時間がかかり、撮影は困難でした。
占有飛翔らしい行動はこの3回だけで、この♀はこの後ずっとヨシノアザミでの吸蜜を繰り返しながら私がこの現場を離れる午後2時前まで滞在し続けていました(下の写真)。
ここで♂でも現れれば配偶行動が見られたかもしれませんが、残念ながら1頭も出現しませんでした。つまり、この日はこの1♀だけの標識でした。
♂の占有飛翔に比べると、8の字型飛翔はなかったこと、飛翔速度がゆっくりしていたこと、枯れ枝で静止せずに、吸蜜したり、枝先で静止したりしたことです。
この日は天気予報では、気温が低く、4m/sの北北西風ということで、アサギマダラは急速に南下してしまったような気がします。
このような観察事例を増やし、共通点を探し出す必要があるでしょう。これが♀の占有飛翔だとすれば、未交尾の♀が配偶相手を探す行動だと考えられます。